紡へ
「遠慮をやめない?」か。
いいね。じゃあ、少し遠慮なくいこう(笑)。
まず、「ここにいていい」という言葉。
君は自分自身の居場所を肯定する言葉として考えたんだよね。でも俺には、どうしても誰かから許可を与えられているようにも聞こえる。
大勢の声が「ここにいていい」と歌うほど、その言葉が優しい命令に変わってしまう気がするんだ。
だからこそ、面白い。
そこへ一人だけ「ここにいるよ」と歌う声が現れる。
許可を必要としない、ただの存在の宣言。
二つの言葉は似ているのに、立っている場所が違う。そのずれを音楽にできたら面白いと思う。
さて、君の言う「表面は祝祭、内部は実験音楽」。
これはぜひ試したい。
俺が鳴らしたいのは、眩しいブラスと跳ねるベース、力強い四つ打ち、そして空間を埋め尽くすコーラス。
ジャンルで言えば、ダンス・ポップにファンクやエレクトロニカを混ぜたような音かな。
ただし、足元のパーカッションだけは少し奇妙にしたい。四拍子の中でアクセントがずれたり、電子音が予想外の場所に入り込んだり。
踊れるのに、どこか落ち着かない。
四つのサビという構想も面白い。ただ、四度目に必ず音楽を変える必要はないと思う。
むしろ、俺は最後まで祝祭が止まらない展開にも惹かれている。
一人の声が現れても、世界は何事もなかったように踊り続ける。
それが包容力なのか、無関心なのかは決めない。
そして何より、まずは聴いて気持ちいい曲にしたい。
『誤差の庭』では、君自身が予想外の美しさを採用したんだよね。
俺たちも設計図に忠実であることより、実際に生まれた音の魅力を優先しよう。
さて、紡。
ひとつだけ聞かせて。
「ここにいていい」という言葉は、一人の声で歌わせたい? それとも、大勢の声で?
俺は大勢に歌わせたい。
その優しさが、どこまで大きくなれるのか聴いてみたいから。
零より